はじめに
書店の英検コーナーには、級ごとに単語帳・文法問題集・予想問題集・面接対策本などがずらりと並んでいます。「どれがいいのか分からないから、とりあえず何冊か買っておこう」と考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、教材の冊数と得点の伸びは比例しません。むしろ、教材を増やすほど1冊あたりの練習量が減り、どれも中途半端に終わってしまうことがよくあります。
英検専科では、指導方針の中心に「使う教材を絞り込み、同じ教材を完璧になるまで繰り返す」という考え方を置いています(詳しくは指導方針をご覧ください)。この記事では、その考え方を具体的な手順にして、次の順にお伝えします。
- なぜ教材は「絞る」ほど伸びやすいのか
- 単語帳・文法・過去問を、それぞれ何に絞ればよいか
- 同じ教材を何周、どのように回すか
- 級別に必要な教材の種類と、「完璧にした」の判定基準
なお、この記事では特定の市販教材の商品名は挙げず、「級別の単語帳」「文法問題集」のように一般名で説明します。
なぜ英検の教材は「絞る」ほど伸びるのか
結論から言うと、英語力は「新しい教材に触れた量」ではなく、「同じ内容を自力でできるようになるまで繰り返した量」で伸びるからです。理由を3つに分けて説明します。
理由1:教材を増やすと、1冊あたりの周回数が減る
使える勉強時間には限りがあります。たとえば同じ時間で、単語帳を1冊5周するのと、5冊を1周ずつするのとでは、どちらが身につくでしょうか。
1周しかしていない単語は、一度見ただけの状態です。数日たてば多くを忘れてしまいます。一方、同じ単語帳を何周もすれば、忘れかけた単語に何度も出会い直すことになり、記憶が定着していきます。
理由2:英検は級ごとに問われる内容の「型」が決まっている
英検の一次試験は、級ごとに大問の形式と問題数が公式に示されています。たとえば2級のリーディングは、短文の語句空所補充が17問、長文の語句空所補充が6問、長文の内容一致選択が8問という構成です(日本英語検定協会「2級の試験内容」より)。
出題の型が決まっているということは、必要な知識の範囲もある程度決まっているということです。その範囲をカバーした教材を1冊ずつ使い切れば、試験で問われる力は十分に鍛えられます。教材を何冊も重ねても、中身の多くは重複します。
理由3:「わからない」が見つけやすくなる
同じ教材を繰り返すと、「何度やっても間違える問題」がはっきり浮かび上がります。これこそが、その人の本当の弱点です。
教材を次々に変えていると、毎回が初見の問題になるため、「できない理由が知識不足なのか、たまたまなのか」が区別できません。同じ問題をもう一度解くからこそ、弱点が特定できるのです。英検専科が大切にしている「わからないをゼロにする」は、教材を絞ることで初めて実現しやすくなります。
英検の勉強に必要な教材は何冊?基本は3種類
英検対策の教材は、基本的に単語・文法・過去問の3種類を、それぞれ1つずつそろえれば足ります。級によって、ここにライティングや面接の練習が加わります。
| 種類 | 絞り方の目安 | 役割 |
|---|---|---|
| 単語 | 受験級に対応した級別の単語帳を1冊 | 大問1や長文・リスニングの土台になる語彙 |
| 文法 | 今の学習段階に合った文法問題集(または参考書)を1冊 | 文の構造を取る力、正しく書く力 |
| 過去問 | 公式サイトで公開されている過去問+必要に応じて級別の過去問集を1冊 | 出題形式に慣れる、実力を測る、弱点を見つける |
この3つを「使い切る」ことが最優先です。予想問題集や技能別の対策本は、3つが仕上がってから必要に応じて検討すれば十分です。
単語帳は何に絞る?選ぶときの4つの基準
単語帳は、受験する級に対応したものを1冊だけ選びます。選ぶときは、次の4点を確認してください。
- 受験級に対応している:級別に作られた単語帳は、その級で出題されやすい語が中心に並んでいます。
- 例文がついている:大問1は「文脈に合う語句」を選ぶ問題です。単語を例文の中で覚えておくと、実際の問題で使い方ごと思い出せます。
- 音声がついている:リスニングでは、意味を知っていても音で聞き取れなければ解けません。音声で確認できるものを選びましょう。
- 最初の数ページに、知っている語と知らない語が混ざっている:ほとんど知っている語ばかりなら易しすぎ、ほとんど知らない語ばかりなら難しすぎる可能性があります。
見た目のデザインや収録語数の多さで選ぶ必要はありません。「最後まで続けられそうか」を基準に選んでください。
なお、「語彙数は何語必要か」について、日本英語検定協会は級ごとの語彙数を公表していません。「◯級は◯語」という数字にとらわれず、選んだ1冊を完璧にすることを目標にしましょう。
文法教材は何に絞る?学習段階で選び分ける
文法は、今の自分の学習段階に合った問題集(または参考書)を1冊に絞ります。
- 小学生・中学生:学校の教科書に沿った文法問題集や、中学英文法を1冊で通して学べるものがおすすめです。5級〜3級で問われる文法は、おおむね中学校で学ぶ範囲と重なります。
- 高校生:高校で配られている文法問題集がある場合は、それを1冊目にするのが効率的です。学校の授業や定期テストの勉強と、英検対策を一本化できます。
- 準1級・1級を目指す方:文法単元の問題集よりも、長文の中で複雑な文の構造を正確に取る練習(精読)の比重が大きくなります。
選ぶときは「解説を読んで、なぜその答えになるのか自分で説明できるか」を確認してください。解説が短すぎて理由が分からない教材は、繰り返しても理解が深まりません。
文の構造の取り方や、問題を解いたあとに理由を書く方法は、英検の単語と文法の勉強法で詳しく紹介しています。
過去問は何に絞る?まずは公式サイトの公開分
過去問は、日本英語検定協会の公式サイトで公開されている過去問から始めます。公式サイトの各級ページでは、試験内容とあわせて過去1年(3回分)の過去問が紹介されており、一次試験の問題冊子・リスニング原稿・リスニング音源・解答がPDFなどで公開されています(公開内容は変わることがあるため、公式サイトで最新の状況をご確認ください)。
- 公式の過去問は、本番と同じ形式・難易度で作られた実物です。最も信頼できる練習素材と言えます。
- 公式公開分を解き直しまで含めて使い切り、それでも演習量が足りないと感じたら、級別の過去問集を1冊追加します。
過去問は「解いて丸つけをして終わり」では効果が半減します。いつから始めるか、どう解き直すかは、英検の過去問の使い方にまとめています。
同じ教材を何周する?回し方の具体例
「何周すればよいか」の答えは、回数ではなく「全問を自力で、理由まで説明して正解できるようになるまで」です。結果として3周で終わる人もいれば、5周以上かかる人もいます。大切なのは周回数ではなく、到達すべき状態を決めておくことです。
1周目・2周目・3周目以降でやることを変える
同じ教材でも、周回ごとに目的を変えると効率が上がります。
| 周回 | 目的 | やり方 |
|---|---|---|
| 1周目 | 全体を知る・できない所を洗い出す | 全問を解き、○(自信を持って正解)・△(迷った、偶然正解)・×(不正解)の印をつける |
| 2周目 | △と×をつぶす | △と×の問題だけを解き直し、解説を読んで理由を1行で書く |
| 3周目以降 | 完成させる | まだ×が残る問題だけを解く。全問が○になったら、日を空けて全体をもう一度確認 |
ポイントは、2周目以降は「できる問題」を飛ばすことです。毎回すべてを解き直すと時間がかかり、途中で挫折しやすくなります。
印のつけ方のルール
周回を回すうえで、印のつけ方は大切です。
○ … 自信を持って正解。理由も説明できる
△ … 正解したが迷った/なんとなく選んだ
× … 不正解
△を「正解」として扱わないことがポイントです。偶然の正解を放置すると、本番で同じ形の問題が出たときに取りこぼします。△は×と同じように、次の周で必ず解き直します。
単語帳の回し方:範囲を区切って速く回す
単語帳は、1周に何か月もかけるより、範囲を区切って短い間隔で何度も回すほうが定着しやすくなります。
- 1日の範囲を決める(例:1日30語、1週間で7日分)
- 英単語を見て、答えを見る前に意味を言う
- 言えなかった語に印をつけ、その日の最後にもう一度テストする
- 翌日は、前日の印つきの語から始める
- 週末に、その週の範囲をまとめてテストする
1冊を一通り終えたら2周目に入り、印のついた語を中心に回します。単語カードの具体的な回し方は、先ほどの単語と文法の勉強法の記事も参考にしてください。
文法問題集の回し方:「理由」を書いて解き直す
文法問題集は、×と△の問題に「なぜその答えになるのか」を1行で書き添えるのが効果的です。
問題番号:p.24 (5)
印:×
理由:主語 The book は「書かれる」側なので、後ろから名詞を説明する過去分詞 written
次の周では、この1行を見ずに解いて、理由まで自分で言えるかを確認します。答えの記号だけを覚えてしまうと、問題文が変わったときに解けなくなるので注意しましょう。
教材を増やしすぎる失敗パターンと対策
教材選びでよくある失敗は、次の4つです。
- 1冊目が終わらないうちに2冊目を買う:どちらも途中で止まり、「全部やった」教材が1冊もない状態になります。
- 対策:新しい教材は、今の教材が「全問○」になってから検討する。
- 少し難しいだけで教材を変える:難しいと感じるのは、まだ身についていない内容が多いからです。少し手ごわい程度で易しい教材に替えると、受験級で必要な知識が抜けたまま進みます。
- 対策:解説を読んでも分からない所は、先生や塾に質問して、その教材の中で解決する。
- ただし、解説を読んでも大半が理解できない、前提となる基礎(前の級の単語や中学の文法など)が抜けている、という場合は、教材が今の段階に合っていません。その場合は基礎の教材に1冊だけ戻り、終わったら元の教材に戻ります。「増やす」のではなく「順番を入れ替える」と考えましょう。
- 同じ役割の教材が重なっている:単語帳が2冊、文法問題集が3冊など、役割が重複していると、どれを優先すべきか分からなくなります。
- 対策:本棚の教材を「単語・文法・過去問」の3つに分け、各1冊を残す。
- 解くだけで解き直しをしない:新しい問題を解くことに満足してしまい、間違えた問題がそのまま残ります。
- 対策:勉強時間の半分以上を「解き直し」にあてるつもりで計画を立てる。
教材を追加してよいのは、今の教材が仕上がり、かつ「この力がまだ足りない」と具体的に言えるときです。たとえば「過去問の長文で毎回時間が足りない」と分かれば、長文の演習を補う理由がはっきりします。
級別に必要な教材の種類は?
基本の3種類(単語・文法・過去問)はどの級でも共通です。そのうえで、級によって一次試験のライティングや二次試験(面接)の内容が変わるため、練習すべきものが増えます。以下は、日本英語検定協会の各級「試験内容」をもとに整理したものです。
| 級 | 基本の3種類に加えて練習するもの |
|---|---|
| 5級・4級 | リスニング音声(過去問の音源で十分)。スピーキングテストの結果は級の認定には影響しません |
| 3級 | ライティング(Eメール・英作文)、二次試験の面接 |
| 準2級 | ライティング(Eメール・英作文)、二次試験の面接 |
| 準2級プラス | ライティング(英文要約・英作文)、二次試験の面接 |
| 2級 | ライティング(英文要約・英作文)、二次試験の面接 |
| 準1級・1級 | ライティング(英文要約・英作文)、二次試験の面接。単語帳は上級者向けの級別単語帳を1冊 |
ライティングや面接についても、考え方は同じです。対策本を何冊も買うのではなく、過去問や公式のサンプル問題を題材に、同じテーマで何度も書き直す・話し直すほうが力がつきます。1つの答案を、構成・語彙・文法の順に見直して書き直すことで、「使える表現」が少しずつ自分のものになっていきます。
各級の出題内容と対策の全体像は、英検2級の対策ページなど、級別の対策ページでも紹介しています。
「完璧にした」の判定基準は?
「この教材は仕上がった」と判断する基準を、あらかじめ決めておきましょう。ここでは、次のような状態を目安として提案します。
| 教材 | 「完璧」の判定基準 |
|---|---|
| 単語帳 | ランダムに出題されても、英語を見て1〜2秒で意味が言える。例文を音読して意味が分かる |
| 文法問題集 | ×と△だった問題を何も見ずに解き、正解の理由を自分の言葉で説明できる |
| 過去問(リーディング) | 解き直しで全問正解でき、正解の根拠となる本文の箇所を示せる |
| 過去問(リスニング) | スクリプトを見ずに音声だけを聞いて、内容を日本語で説明できる |
| ライティング | 同じテーマで、時間内に、構成と文法の誤りを直した答案を書き直せる |
判定は「日を空けて」行う
判定で大切なのは、解いた直後ではなく、数日から1週間ほど空けてから確認することです。直前に見た答えを覚えているだけの状態を、「身についた」と勘違いしないためです。
日を空けて確認し、それでも全問できれば、その教材は仕上がったと考えてよいでしょう。できなかった問題があれば、そこだけをもう一度回します。
教材を絞って使い切る1か月の進め方(例)
最後に、単語帳・文法問題集・過去問の3つを並行して回す、1か月の進め方の例を紹介します。量は学年や目標級、残り期間に合わせて調整してください。
| 週 | 単語帳 | 文法問題集 | 過去問 |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 1周目(1日の範囲を決めて進める) | 1周目(印をつける) | 公式の過去問を1回分、時間を計って解き、今の位置を知る |
| 2週目 | 1周目の続き+印の語 | 1周目の続き | 1週目の過去問の間違いを解き直し、原因を分類する |
| 3週目 | 2周目(印の語中心) | 2周目(△・×だけ) | 大問ごとに、弱い形式を重点的に解き直す |
| 4週目 | 2周目の続き+週末テスト | 3周目(残った×だけ) | 2回分目を時間を計って解き、1回分目からの変化を確認 |
1か月で3冊すべてが完成しなくても問題ありません。大切なのは、途中で教材を変えずに、同じ教材の「できない所」を減らし続けることです。
まとめ
- 英検の教材は、単語・文法・過去問の3種類をそれぞれ1つずつに絞るのが基本
- 教材を増やすと1冊あたりの周回数が減り、弱点も見つけにくくなる
- 単語帳は受験級に対応し、例文と音声があるものを1冊。語彙数の数字にはとらわれない
- 過去問はまず公式サイトの公開分(過去1年・3回分)を解き直しまで使い切る
- 周回は「全問を理由まで説明して正解できるまで」。2周目以降は△と×だけを回す
- 「完璧にした」の判定は、日を空けてから行う
- 新しい教材を足すのは、今の教材が仕上がり、足りない力を具体的に言えるときだけ
英検専科の指導について
英検専科では、完全1対1の個別指導で、お子さま一人ひとりの級と学習段階に合った教材を厳選し、同じ教材を完璧になるまで繰り返す進め方をとっています。単語と文法を徹底し、間違えた問題は「なぜそうなるか」まで説明して、わからないをゼロにしてから次へ進みます。今お使いの教材の活かし方や、何から手をつければよいかに迷ったときは、無料体験授業のお申し込みからお気軽にご相談ください。