はじめに
英検1級の二次試験(面接)には、準1級までのような問題カードの音読もイラストの描写もありません。5つの社会的なトピックから1つを選び、1分間考えて2分間のスピーチを行い、その内容について面接委員と質疑応答をします。問われるのは、英語の正確さに加えて、社会的な話題について、その場で筋の通った意見を組み立てて伝える力です。
この記事では、日本英語検定協会(以下、英検協会)の公式サイトで確認できた情報をもとに、流れと評価の観点を整理し、トピックの選び方、スピーチの組み立て方、質疑応答の答え方、分野別の準備と練習法を解説します。英語の例はすべて自作で、実際の出題ではありません。試験の情報は2026年9月時点のものです。1級全体の対策は英検1級の対策ページもご覧ください。
英検1級の二次試験の基本情報(2026年9月時点)
結論:面接委員2人との約10分の個人面接で、「自由会話→1分の準備→2分のスピーチ→4分の質疑応答」の順に進みます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 形式 | 個人面接(面接委員2人)。やりとりはすべて英語 |
| 所要時間 | 約10分 |
| 自由会話 | 面接委員と簡単な日常会話(英語版の公式ページでは1分) |
| トピックカード | 5つのトピックから1つを選ぶ |
| 考える時間 | 1分間(メモは取れない) |
| スピーチ | 2分間(超えると途中でも中止) |
| 質疑応答(Q&A) | 4分間 |
| 合格基準スコア | 602(英検CSEスコア。技能ごとの満点は850) |
面接中のメモ・写真撮影・録音は禁止されています。なお、2024年度の問題形式リニューアルでは、1級の二次試験は「変更なし」とされています(参考:2024年度英検リニューアル完全解説)。
当日の流れ(入室から退室まで)
結論:考える時間が1分しかないこと、スピーチが2分で打ち切られることの2点を前提に準備します。
公式サイトで説明されている流れは次のとおりです。
- 入室:係員の指示に従って面接室に入る
- 面接カードを渡す:係員に「面接カード」を手渡す
- 着席:面接委員の指示に従って座る
- 氏名の確認と簡単な日常会話
- トピックカードを受け取る:5つのトピックが書かれている
- 考慮時間(1分間):1つを選んで内容を考える。メモは取れない
- スピーチ(2分間):面接委員の指示で始める
- Q&A(4分間):スピーチの内容やトピックに関連した質問に答える
- トピックカードを返す:必ず面接委員に返してから退室する
- 退室:控室に戻ったり、待っている受験者と話したりしない
最初の日常会話も英語でのやりとりの一部です。1〜2文で具体的に答え、声の大きさと話す速さを整えておきましょう。流れは英検協会のバーチャル二次試験(1級)でも確認できます。
評価の観点と合格基準
結論:スピーチと応答の「内容」、語い、文法、発音が評価されます。合格基準スコアは602です。
公式サイトの「1級の試験内容」には、二次試験はスピーチ・応答の内容、語い、文法、発音の正確さなどの観点で評価すると書かれています。英語版の公式ページでは、評価の区分として Short Speech(スピーチ)、Interaction(やりとり)、Grammar and Vocabulary(文法と語い)、Pronunciation(発音) の4つが挙げられています(括弧内は筆者の訳)。区分ごとの配点は、公式サイトの試験内容ページには示されていません。
ここからわかるのは、質疑応答でのやりとりも評価の対象だということです。スピーチだけ準備しても、質問にかみ合わない答えや沈黙が続けば評価を落とします。
合格基準スコアは602(英検CSEスコア)で、1級の技能ごとの満点は850です。二次試験はスピーキングのスコアのみで判定され、合格基準スコアは変動しません。スコアは統計的な手法で算出されるため、「何点分できれば合格」と自分で計算することはできません。しくみは英検CSEスコアの仕組みと合格点で解説しています。
5つのトピックから1つを選ぶ|選び方の基準
結論:「おもしろそうなトピック」ではなく、「理由を2つ具体例つきで言えて、深く聞かれても答えられるトピック」を選びます。
トピックの出され方
公式サイトには過去の出題例として、科学の発展は常に有益か、芸術への財政的支援、選挙権の行使を義務にするべきか、遺伝子組み換え食品の安全性などが挙げられています。一つの分野に偏らない社会的なテーマが並ぶと考えておきましょう。問いの形には、たとえば次のような型があります(例は自作)。
| 型 | 自作の例 | 答え方 |
|---|---|---|
| Should 〜? | Should AI be regulated by governments? | 賛成か反対かを明示する |
| Is 〜? | Is space exploration worth its cost? | 立場を示し、条件をつけてもよい |
| Agree or disagree: 〜 | Agree or disagree: Tourism does more good than harm | 冒頭で agree / disagree を宣言 |
| What 〜? | What can be done to revitalize rural areas? | 方法や役割を2〜3つ挙げる |
選ぶときの3つの基準
- 立場を5秒で決められるか
- 理由を2つ、それぞれ具体例つきで言えるか:例が出ないと2分話し切れない
- 質問で深く聞かれても答えられるか:背景知識のある分野のほうが安全
評価されるのは意見の正しさではなく、筋道立てて伝える力です。本心と違っても、理由を言いやすい立場で話してかまいません。
1分間の使い方(目安)
| 時間 | やること |
|---|---|
| 0〜15秒 | 5つに目を通し、2つに絞る |
| 15〜35秒 | 1つに決め、立場と理由2つを決める |
| 35〜50秒 | 理由ごとに具体例を決める |
| 50〜60秒 | 最初の1〜2文を頭の中で言ってみる |
最初の1文が決まっていれば、スピーチは始められます。
2分間スピーチの組み立て方
結論:「立場→理由1+具体例→理由2+具体例→結論」の型を1つに決め、どのトピックでも同じ型で話します。
| パート | 目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 導入 | 約15秒 | 立場を述べ、理由が2つあると予告する |
| 理由1 | 約35秒 | 理由を1文で述べ、具体例や説明を2〜3文 |
| 理由2 | 約35秒 | 理由1と重ならない観点で同じように |
| 譲歩(省略可) | 約15秒 | 反対の主張を認めたうえで立場を補強 |
| 結論 | 約10〜15秒 | 立場をもう一度述べて締める |
2分を超えると途中でも中止されるため、1分30秒で結論に入れる分量を目標にします。理由1と理由2は、「個人/社会」「経済/倫理」「短期/長期」のように観点を変えると重なりません。
自作のスピーチ例
トピック(自作):Agree or disagree: Working from home should become the standard for office workers
I disagree with the idea that working from home should become the standard
for office workers. Although remote work has clear benefits, I believe it
should remain an option rather than the norm, for two reasons.
First, face-to-face interaction is essential for developing new ideas. Many
innovations come from conversations that happen by chance, such as a quick
chat in the hallway after a meeting. Such exchanges are hard to recreate
through video calls, which tend to be scheduled and focused on tasks.
Second, making remote work the default could widen inequality among
workers. Not everyone has a quiet room at home. Young employees living in
small apartments may find it hard to concentrate, and they would also miss
the chance to learn by watching experienced colleagues.
Of course, working from home reduces commuting time. That is why companies
should offer flexible options, such as working remotely two days a week.
In conclusion, remote work is a valuable tool, but it should not replace
the office entirely.
理由1は「組織の創造性」、理由2は「個人の格差と成長」と観点を分け、譲歩(通勤時間の削減)から「柔軟な選択肢」という提案につなげています。難しい単語を無理に使うより、First / Another reason / Of course / In conclusion のような語で論理のつながりをはっきり示すほうが伝わります。
質疑応答(Q&A)の答え方
結論:「結論を1文→理由→具体例」の順に20〜40秒で答えます。反論されても立場を変えず、一部を認めてから自分の考えを補強します。
公式サイトでは、Q&Aはスピーチの内容や、トピックに関連した質問とされています。練習では、①内容を掘り下げる質問、②反対の立場からの質問、③関連する別の論点、の3種類を想定しておきましょう。
(自作の例:先ほどのスピーチの続き)
Q: Many online tools now let people chat freely.
Can't technology solve the problem you mentioned?
A: That's a fair point. Online tools have certainly improved
communication. However, face to face, we can read facial expressions,
which helps us build trust more quickly. So technology can reduce
the problem, but not completely solve it.
「That's a fair point.」で指摘を受け止め、However 以下で立場を保っています。ほかにも次の点に気をつけましょう。
- 質問に直接答えてから説明する:Should 〜? と聞かれたら、まず立場を言う
- スピーチと矛盾しない:立場を変えると、スピーチ全体の説得力が下がる
- 1問に長く話しすぎない:4分間のやりとりなので、1分以上話し続けない
- 考える時間をつなぐ表現を持つ:That's a difficult question, but 〜. など。黙り込むより英語で考えを示す
トピック別の準備の仕方
結論:分野ごとに「よく議論される論点」と「使える具体例」をストックしておきます。1分間は、ゼロから意見を作る時間ではなく、ストックから選ぶ時間です。
公式サイトでは、1級の話題として社会生活一般、芸術、文化、歴史、教育、科学、自然・環境、医療、テクノロジー、ビジネス、政治などが挙げられ、二次試験は「社会性の高い幅広い分野の話題」とされています。論点の例(筆者作成)は次のとおりです。
| 分野 | 論点の例 |
|---|---|
| 政治・経済 | 投票率の低さ、国際機関の役割、働き方、格差 |
| 科学・テクノロジー | AIと雇用、個人情報の保護、SNSの規制 |
| 医療・健康 | 高齢化と医療費、遺伝子技術の倫理 |
| 自然・環境 | 気候変動対策と経済、再生可能エネルギー |
| 教育 | 早期の英語教育、オンライン学習 |
| 文化・社会 | 伝統の保存、芸術への公的支援、監視カメラと治安 |
分野ごとにノート1ページで、論点1つ・賛成と反対の理由を2つずつ・具体例2つ・キーワード10語程度をまとめます。両方の立場を準備しておくと、Q&Aで反論されたときにも対応できます。
1級の一次試験の英作文も、社会的なトピックについて意見を論述する問題です。英作文で考えた論点は、そのまま面接の材料になります。 書き方は英検1級ライティング対策を、一次試験を含む学習計画は英検1級の勉強法をご覧ください。
練習法|録音と本番形式の模擬面接
結論:「1分で考えて2分で話す」を録音して聞き直し、直すことが基本です。仕上げには、面接委員役がいる本番形式の練習が有効です。
- タイマーで「1分準備+2分スピーチ」を録音:自作のトピックカードを使い、メモは取らない
- 聞き直してチェック:15秒以内に立場を述べたか/理由2つの観点が重なっていないか/具体例があるか/2分以内に結論まで話したか/基本的な文法の誤りがないか
- 同じトピックで3回言い直す:新しいトピックを次々に解くより、同じトピックを仕上げるほうが型と表現が身につく
- 想定質問を3つ作って答える:掘り下げ・反論・別の論点を1つずつ
- 本番形式の模擬面接:Q&Aはその場で考えるやりとりなので、一人の練習に加えて、相手のいる練習もしておくと安心です。英語で反論や追加の質問をしてくれる相手と練習しましょう
一次試験の結果が出てから二次試験までの期間は長くないので、論点ストックは一次試験の勉強と同時に作り始め、一次試験後は毎日1〜2トピックの録音と、週1〜2回の模擬面接を続けるのが理想です。直前期は英検直前1週間の最終チェックリストも参考にしてください。
よくあるつまずき
- トピック選びで迷って時間が足りない:最初の15秒で2つに絞ると決めておく
- スピーチが1分で終わる:理由ごとに「たとえば」「その結果」の2文を足す
- 2分を超えて結論まで届かない:練習で1分30秒時点の位置を確認し、説明を削る
- 暗記したスピーチを当てはめる:問いに答えていないスピーチになる。準備するのは論点・理由・具体例という材料で、完成原稿ではない
- Q&Aで意見がぶれる:一部を認めてから、However で自分の立場に戻る
よくある質問
Q. 考える時間にメモは取れますか?
取れません。公式サイトにも、考慮時間はメモを取ることができないと明記されています。
Q. スピーチが2分を超えるとどうなりますか?
公式サイトによると、2分を超える場合は途中でも中止されます。1分30秒前後で結論に入る分量で練習しましょう。
Q. 二次試験に不合格だったら、一次試験から受け直しですか?
公式サイトによると、1級〜3級の一次試験に合格し、二次試験を欠席または不合格となった場合は、一次試験免除を申請して二次試験から受けられます。申請できるのは翌年度の同じ回までです。準1級の面接との違いは英検準1級二次試験対策と読み比べるとわかりやすいでしょう。
Q. 当日の持ち物で気をつけることは?
2026年度第1回検定から、1級〜3級の受験者は、試験当日に英検協会が定める顔写真付き身分証明書の原本の提示が必須になりました(従来型の二次試験を含みます)。コピーやスマートフォンで撮影した画像は認められません。対象の証明書は英検協会の案内ページで確認してください。
まとめ
- 1級の二次試験は、面接委員2人との約10分の個人面接
- 自由会話→1分で考える(メモ不可)→2分間スピーチ→4分間のQ&A
- 評価の観点は内容・語い・文法・発音。合格基準スコアは602(満点850)
- トピックは「理由2つと具体例が言えて、深く聞かれても答えられるもの」を選ぶ
- スピーチは立場→理由1→理由2→結論の型で、1分30秒で結論に入る分量に
- 分野ごとの論点ストックを、一次試験の英作文と共通にして準備する
英検専科の指導について
英検専科は、英検に特化した完全1対1の個別指導教室です。1級の面接対策では、自作のトピックカードで「1分準備+2分スピーチ+Q&A」を本番と同じ流れで練習し、論点の立て方や反論への切り返し方まで確認します。授業はオンラインで全国から受講でき、面接練習もオンラインで本番形式で行えます(オンライン授業について)。練習の題材を必要なものに絞り、英検CSEスコアの合格基準から逆算して学習計画を立てます。
授業外の質問や英作文の添削は、学習アプリ English LABO の AI 機能でいつでも受けられ、LINE・メールでも受け付けています(回数無制限・無料)。代表は、生徒2,000名超・講師200名以上が在籍する大手個別指導塾で、年間MVP・月間MVP・成績アップMVPを複数回連続で受賞しています。まずは無料体験授業のお申し込みからお気軽にご相談ください。
出典・参考
- 1級の試験内容|公益財団法人 日本英語検定協会
- 1級の過去問・試験内容|公益財団法人 日本英語検定協会
- About EIKEN Grade 1(英語版・評価区分)|Eiken Foundation of Japan
- 英検バーチャル二次試験 1級|公益財団法人 日本英語検定協会
- 英検CSEスコアとは(各級の合格基準スコア)|公益財団法人 日本英語検定協会
- 英検CSEスコアでの合否判定方法について|公益財団法人 日本英語検定協会
- 2024年度 問題形式リニューアルサイト|公益財団法人 日本英語検定協会
- 一次試験免除について|公益財団法人 日本英語検定協会
- 顔写真付き身分証明書お知らせページ|公益財団法人 日本英語検定協会